アメリカのインターネット検索の会社が、インターネット検索で回答を得ることが難しい質問について調査をしたところ、「人生の意味は何ですか?」という質問が1位になったそうです。人生の意味というのは誰かが答えているようで明確には答えられていない問題であるため、この内容について深堀してみたいと思います。
哲学はとても複雑で難しい内容に感じますが、実はそのルーツは単純明快で「ギリシア哲学」です。ですので、私たちが一般的に考える哲学のイメージはギリシア哲学であると言って間違いありません。そして、歴史を振り返ると、いわゆるルネッサンス(または産業革命)より前は、「宗教」一色の世の中でした。ですので、哲学からみた人生の意味というのは、シンプルに聖書の中に書かれている「神の創造」の内容と同じになります。
聖書の中で神は人間を創造した後に、「生めよ、増えよ、地に満ちよ」と命令しているのですが、神の被造物として、人間は「生まれて、増えて、地に満ちていく」ことが人生の意味となります。
ではルネッサンス以降の哲学はというと、それは人間の「理性」を中心とした内容となり、個性化、複雑化をしていきます。人間はあらゆるものに意味を見出す生き物であるので、現代哲学で「人生の意味?」を考えたとしても、人生の意味は一人一人に唯一のものとして存在し、無限の答えがあるということになります。
人生の疑問ランキング1位になるほど、この質問にしっくりとした答えを出すことは難しいのですが、現代哲学の「認識論」が、この質問の答えを出す手がかりをくれます。人生とは人が生きることですが、それは人が存在することでもあります。人が存在を認識するときに、「それがそれだから認識する」という方法と、「誰もがそれをそれだと言うからそれだと認識する」という2つの方法があります。例えば「ポストが赤い」というのは、ポストの色を科学的に分析して赤だと理解する方法と、誰もがポストは赤いと言っていて常識なので赤だと理解する方法になります。
人生の意味を考えるときに、人間として「共通」であり、「誰にでも当てはまること」を挙げることがヒントになります。人間は動物から進化をして人類になっているため、「動物的な本能」を無意識のうちに抱いて生きています。
では、人間の持つ動物的な本能の中で最も大きなものは何かというと、心理学者のフロイトは「性」であると主張しました。しかし、ただ単純に「性」というだけではなく、生物の種という次元で考えると、「性」の後にある「生命の繁殖」がより本質になります。人間が子供を産んだ時に宇宙と一体となったような神秘的な喜びを感じる人が多いですが、それは人間の持つ動物的な「種の繁殖」の本能が満たされ、大きな感動を覚えるからです。そして、自分の子供が生まれる時よりも、孫が生まれる時のほうがより喜びが大きいというのは、自分のDNAが繁殖して生み増えていくということが、人間の本質的な喜びであり、人生の意味であることを証明しています。
そういう意味でこの種の繁殖という内容は聖書の内容と全く同じになります。もともと宗教は、自然の中にある共通した法則性を「真理」として考え生まれてくるので、人間の動物(自然の法則)の側面と聖書の法則性が一致しているのだと言うことができます。
人生の疑問ランキング1位である人生の意味について考察するには、人類の共通する何かを根拠にしなければなりません。世界のベストセラー第1位がどんな本であるかというと、それは先ほど紹介した聖書です。では聖書の一番の冒頭に何が書かれているかというと、神は「光あれ!」という言葉(ロゴス)によって世界を創造したとあります。
この世の中で言葉を扱うことができるのは神と人間であると言えます。そして、人間は言葉を使うことによって、情報というのを過去から未来へと伝えることができるのです。動物の鳴き声は現在の情報しか仲間に伝えることができません。
人類の歴史は「物語」によって切り開かれてきたと言えます。歴史の教科書に出てくる人物たちは、全員、人類に影響を与えた素晴らしい物語を持っています。エジソンは発明の父として、「努力が科学の発展につながる!」という物語で、科学者にモチベーションを与えました。イエス=キリストやパウロ、孔子などの聖人たちは、自己犠牲の物語を通して、人類に道徳と倫理の必要性を訴えました。
人間は人生の最後を迎える瞬間に、自分の一生を走馬灯のように振り返ると言われています。私たちが過ごす一瞬一瞬の時間は、そのまま過ぎていく時間ではなく、宇宙のどこかに映画のフィルムのように記録されていると考えられます。そして、その中でも人類の財産となる素晴らしい物語が生まれた時には、それは現実の本や、映画やドラマなどになって人々に伝えられ、人類の良心や文化、科学などがその恩恵によって一段階発展します。
人生の意味は私という人生の物語を完成させることです。誰かがあなたの物語を知った時に、ぜひ映画やドラマにしたい、と言いたくなるような、素晴らしい人生の物語を作ることができれば幸いです。
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